絵を置いてくの

「描いたはいいけれど、誰にみられるでもなく朽ちていく」そんな絵たちをここに置いていきます。

繭の内から眺む

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こんなに冬って寒かっただろうか

悴んだ両手をさすってみて初めて気づく

ニットのマフラーと手袋が欲しいな

冬を越すための、あたたかいものが欲しい


そうだ、少し想像してみよう

自分で拵えてみるとして

まずは作り方から調べてみる

そして、材料を手芸店で買ってきて

下手なりに頑張って編んで

なんとか完成した冬を越すためのもの

よれよれの赤いマフラーと手袋

不恰好だが、きっととてもあたたかい

これがあれば、冬なんて楽に越せる


しかし、よくよく考えてみれば

今から作り始めたとしても

これが出来上がるのは次の春ではないか

この冬を越すための役には立たない

しっかり準備をしてて、動物たちは偉いなあ

なんて独り言ちる


僕が冬を越すためにやったことといえば

古い友人に連絡した事や

絵を描いた事

言葉を連ねた事くらいなのに

僕なんかより、彼らはよっぽどえらいなあ

なんて独り言ちる

 

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一条はやがて無情に

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絶対に欲しい、絶対に成し遂げたい

いわゆる”本懐”を書き出した

真っ白のスケッチブックにたった数文字

あらゆる無駄を削ぎ落とした一条

その毅然とした態度に何度も惚れた

そして、一つの疑問が生まれた

「であれば、残りの余白は何なのか」

「その大部分を覆う白色は何なのか」

気づかなければよかったと切実に思う

きっと、“本懐”の為に犠牲になる様々だろう

色を付ける事が叶わなかったもの達

痛みも、苦しみも、喜びも、ありとあらゆる全て

そう気づいた途端、痛みだけがこの身を襲った

「体が動かない、息ができない」

「まずい、死ぬ」

だから、その痛みから解放される為に

その苦しみから逃げ出す為だけに

様々などうでもいいものを書き足して

欲しいものを無理矢理、たくさんに増やした

気づいたそれを、見なかったことにする為に

”本懐”が霞むように願いを込めて

偽物で埋め尽くして、塗りつぶした

“本懐”と同じ黒色の、呪詛の様な文字の数々

そして無事に埋没した”本懐”

いったいどこへ消えたやら

今となってはもうわからない

確かにそこにあるはずなのに、認められない

真っ黒になったスケッチブックと

真っ赤に泣き腫らしたその両目

残ったのはそれだけ、それが全て

 

 

 

 

そんな夢を見た、のかもしれない。

 

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終わりと始まり

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“始まり”はあっさりとしているのに

“終わり”はいつもあっけない

“終わらないようにする”事に全てを注ぐのに

“終わり”はそんな私たちの事を気にも留めない

それが、怖い

儚くて、脆くて、でも愛しくて

何よりもっと嫌なのは

“終わり”を目の前にして、それでも抗おうとする時の感覚

大切なもの、大切な人、大切なすべてが次第に霞んでいく

それに抗おうとする時の感覚

身のうちがちぎれる様な

頭の一部がぽっかり無くなってしまったかの様な

脈を打つ心臓がのたうち回る様な

そんな感覚たちが、本当に嫌いだ

だから私は、”始まり”を出来るだけ遠ざけるようになった

“始まり”が無ければ”終わり”は来ない

"終わり"が無いならば、抗わなくたっていい

そうすれば、傷付くこともない、誰も

 

そんなに都合良くはいかないでしょう?

ああ、その通りだ、知っているとも、だから嫌なんだ

"始まり"も"終わり"と同じく、そんな私達の事を気に留めることはない

だから、"始まり"はいつも不意に、"終わり"を引き連れてやってくる

きっとそういう質なんだ、"終わり"も"始まり"も

そのせいで、私達はいつも彷徨っている

"始まった"愛しいものを追い続けて

"終わりゆく"愛しいものを逃さないために

すでに"終わってしまった"愛しいものを

これから"始まる"愛しいものを

どうにか、どうにかしたくて

 

そんな事を考えながら描いた

「終わりと始まり」

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エリカ

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エリカ エリカ 光をくれよ


いつだってそう、時間は待ってくれない

流れに乗れず、取り残され続けた

別に負い目を感じているわけじゃない

ただ、決して拭いきれない焦燥感があるだけ

ひとりよがりの絵と言葉はそのあらわれ

そしていつも計り違う、世界との距離感

苛立てば苛立つほどに物差しは狂う

決意をするたびに何かを壊した

一歩を踏み出すたびに世界はひずんでいった

すまない、そうするしかなかったんだ

今はただ、謝ることしかできない

“やれたのにやらなかった”

そんな後悔だけはもう、絶対に嫌なんだ


エリカ エリカ 光をくれよ


いつだってそう、人は待っていてくれない

繋がりは脆く、時には何よりも強い

けれど、僕らそのものが儚いから

せつなに咲いた奇跡を見落としてしまう

選択し続ければ、いつかは気づけるかも

そんな少しの期待だけで、今日を行く

悩めば悩むほどに足を取られる

言葉を吐くたびに何かを背負った

自分を守るたびに他人を傷つけていった

気にするべきは評価じゃない

ちゃんと伝わっているかどうかだ

“でも、でも、でも、でも”

そんな疑いはもう、僕には必要ないんだ


エリカ エリカ 君こそが希望だ

いつだってそう、世界は待ってくれない

望んで寂しくなったわけじゃない

願って意味をもらったわけじゃない

それなのに、いつだって今を生きている

どうか見届けてくれないか エリカ

 

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私だけのケプラー1649c

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ここは私の故郷じゃない

息をするには狭すぎる

旅立つための動機としては

十分なほどに確かなものだ


時が満ちれば潮が寄せ

あとはそのまま攫われるだけ

潮汐力に任せていれば

どこまでだっていけるはず


行けば行くほど人は減り

後には虚空が聳え立つ

そんな景色に憧れていた

旅人はいつも明日を憂う


私の産まれた系外惑星

たどった轍に花が咲く

あてもなければ見切れもしない

どこかへ誘う星を知る