絵を置いてくの

「描いたはいいけれど、誰にみられるでもなく朽ちていく」そんな絵たちをここに置いていきます。

一条はやがて無情に

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絶対に欲しい、絶対に成し遂げたい

いわゆる”本懐”を書き出した

真っ白のスケッチブックにたった数文字

あらゆる無駄を削ぎ落とした一条

その毅然とした態度に何度も惚れた

そして、一つの疑問が生まれた

「であれば、残りの余白は何なのか」

「その大部分を覆う白色は何なのか」

気づかなければよかったと切実に思う

きっと、“本懐”の為に犠牲になる様々だろう

色を付ける事が叶わなかったもの達

痛みも、苦しみも、喜びも、ありとあらゆる全て

そう気づいた途端、痛みだけがこの身を襲った

「体が動かない、息ができない」

「まずい、死ぬ」

だから、その痛みから解放される為に

その苦しみから逃げ出す為だけに

様々などうでもいいものを書き足して

欲しいものを無理矢理、たくさんに増やした

気づいたそれを、見なかったことにする為に

”本懐”が霞むように願いを込めて

偽物で埋め尽くして、塗りつぶした

“本懐”と同じ黒色の、呪詛の様な文字の数々

そして無事に埋没した”本懐”

いったいどこへ消えたやら

今となってはもうわからない

確かにそこにあるはずなのに、認められない

真っ黒になったスケッチブックと

真っ赤に泣き腫らしたその両目

残ったのはそれだけ、それが全て

 

 

 

 

そんな夢を見た、のかもしれない。

 

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